この記事では、「下足」と「土足」の違いを分かりやすく説明していきます。
「下足」とは?
「下足」とは、脱いだ履物を注す言葉です。
この言葉は、江戸時代から芝居小屋や寄席や遊郭等の座敷に上がる時に、下足番を置いて来客の履物をあずかって、下足札を渡していた事に由来する言葉です。
現在の靴箱に当たるものは「下足箱」と表現されていました。
ただ、この「下足」は、最近ではあまり聞かなくなった言葉と言えるかも知れません。
また、烏賊(イカ)の足の事を、一般的にゲソと言いますが、これは寿司屋が符丁として使っていた言葉で、この「下足」が元となったものです。
「土足」とは?
「土足」とは、履物をはいたままの足をさす言葉です。
この言葉は、『土足禁止』の表記で馴染みのある言葉です。
またこの意味から転じて『彼は他人の家庭の事情に土足で踏み込んでくる』のように、無遠慮に立ち入ろうとする事にも「土足で踏み込み」が使われています。
「下足」と「土足」の違い
「下足」とは、脱いだ履物を注す言葉で、一方の「土足」とは、履物をはいたままの足をさす言葉です。
日本の習慣では、家や畳の部屋に入る時には、「土足」は禁止であり、履物は脱ぎます。
この脱いだ履物の事を「下足」と呼ぶ関係性が2つの言葉にはあるのです。
これは日本では、家やそれ以外でも畳の部屋等に入る際には履物を脱ぐと言う習慣があるからこそ、生まれた言葉と言えるのです。
余談ですが、日本でこうした習慣が生まれたのは、外で履いていた履物で家の中を汚したくないと言う点が大きな要因です。
これは畳と言う文化が生み出され、それと日本には梅雨があり、濡れて泥で汚れた履物のままだと畳や床を傷める事から生まれた習慣だとされています。
日本以外にも高温多湿の東南アジア等で、こうした習慣を持つ地域もあります。
またトルコなどの中東では「穢れを外から持ち込まない」との宗教的な理由から、靴を脱ぐ習慣があり、これがペルシャ絨毯と言った高級絨毯を生み出した要因となっている例もあります。
一方で、ヨーロッパでは昔から人前で靴を脱ぐ事は、失礼ではしたないとされる国もあります。
もしも、日本にヨーロッパのような文化があれば、「下足」や「土足」と言った表現は生まれず、単に履物の種類を表す靴や下駄と言った言葉だけであったろうと推察されます。
まとめ
「下足」とは、脱いだ履物を意味する言葉で、一方の「土足」とは、履物をはいたままの足をさす言葉です。
「下足」や「土足」と言う言葉は、日本では家やそれ以外でも畳の部屋等に入る際には、履物を脱ぐと言う習慣があるからこそ、生まれた言葉と言えます。
もしも、ヨーロッパの様に家の中でも靴などの履物を履いたまま生活すると言う習慣であったら、履物の種類を表す草鞋や靴や下駄と言った言葉は存在しても、「下足」や「土足」と言った言葉は生まれていなかったと推察されます。