「是非に及ばず」と「是非もなし」の違いとは?使い方や例文も解釈

「是非に及ばず」と「是非もなし」の違い生活・教育

この記事では、「是非に及ばず」「是非もなし」の違いや使い方を分かりやすく説明していきます。

「是非に及ばず」と「是非もなし」の違い

「是非に及ばず」「是非もなし」はどちらも「良いか悪いか(善悪)の判断がつかない・どうしようもない・仕方がない」を意味している織田信長が本能寺の変で襲われた時の言葉とされるものですが、「是非に及ばず」には「物事の善悪を議論している場合ではないので応戦しよう」という意味のニュアンスがあります。

「是非に及ばず」に対して「是非もなし」のほうは、「善悪を論じても仕方がない」「事がここに至ってはどうしようもないという諦め」の意味のニュアンスが強いという違いを指摘できます。


「是非に及ばず」と「是非もなし」の使い方の違い

「是非に及ばず」「是非もなし」の使い方の違いは、「是非に及ばず」の表現は「物事の善悪を論ずるには及ばない(論じている場合ではない)、今できることをしようという場合」に使われますが、「是非もなし」のほうは「物事の善悪の区別がなくどうしようもない場合、仕方がないと諦めている時」に使うという違いがあります。

例えば、問題が差し迫っている時に「是非に及ばず」というと「あれこれ論じずにすぐに対応しよう」の意味の使い方になり、「是非もなし」というと「もうどうしようもない、結果を受け入れるだけ」のニュアンスの使い方になるのです。


「是非に及ばず」と「是非もなし」の英語表記の違い

「是非に及ばず」を英語で表記すると、以下のようになります。

“Not if you’re discussing about right and wrong.”(是非を議論している場合ではない・是非に及ばず) “It can not be helped.”(助けは期待できない・自分でやるしかない・是非に及ばず) 「是非に及ばず」に対して「是非もなし」を英語で表記すると、以下のようになります。

“oh well”(どうしようもない・仕方がない・是非もなし) “There is nothing we can do”(我々にできることはない・是非もなし) 上記のように、「是非に及ばず」の英語表記は“Not if you’re discussing about right and wrong.”などで、「是非もなし」の英語表記は“oh well”などであるという違いを指摘することができます。

「是非に及ばず」の意味

「是非に及ばず(ぜひにおよばず)」という言葉は、「良いか悪いかを論じても仕方がない」「議論してもどうしようもないので、今現在の状況に対応するしかない」を意味しています。

「是非に及ばず」の言い回しは、家臣の明智光秀に奇襲を受けた「本能寺の変(1582年)」で織田信長が語った言葉とされています。

また「是非に及ばず」は、上杉景勝が徳川家康に謀反を疑われた時に、上杉家の家臣・直江兼続が家康に返信した「直江状」にも使われている言葉です。

「是非に及ばず」の使い方

「是非に及ばず」という言葉は、「是非善悪を論じても仕方がない場合・何かの要因で差し迫った状態に追い込まれてやるしかない場合」に使うという使い方になります。

例えば、「納期が明日に迫っている以上、是非に及ばずでできるだけの仕事をするしかない」といった文章で使えます。

「是非に及ばず」を使った例文

・『敵が城下にまで迫ってきている状況を見れば、是非に及ばずで戦うしかないだろう』

・『企業業績が急激に悪化しているため、是非に及ばずでリストラを断行しました』

・『猛暑の季節にエアコンが壊れたので、是非に及ばずで買い替えることにしました』

・『是非に及ばず、どうしても必要なものであれば買うしかありません』

・『試験の申込み期限が明日までなので、是非に及ばずで書類をすぐに提出しました』

「是非に及ばず」の類語

「是非に及ばず」の類語には、「論ずるに値しない・論を俟たない(ろんをまたない)・やむにやまれず」などがあります。

「是非に及ばず」という表現は、「善悪について議論する価値がないさま=論ずるに値しない」「議論するまでもなく当然であるさま=論を俟たない」「差し迫った状況でやるしかない=やむにやまれず」を意味しているのです。

「是非に及ばず」の対義語

「是非に及ばず」の国語辞典などに掲載されている対義語はありませんが、反対の意味を持つ言葉として「是非を考えるべき・善悪を考慮するべき・差し迫っていない・考える猶予がある」などを想定できます。

「是非に及ばず」には「差し迫った状況で是非善悪を論じるには及ばない・考える猶予などない」の意味合いがあるので、その反対の意味を持つ対義語として、「是非を考えるべき・差し迫っていない・考える猶予がある」を挙げられます。

「是非もなし」の意味

「是非もなし」という言葉は、「是非善悪(良いか悪いか)の判断がつかないこと・今さら善悪の判断をしても仕方がないこと」を意味しています。

「是非もなし」の表現には、「仕方がない・どうしようもないという諦めの心境」のニュアンスが反映されているのです。

「是非に及ばず」の言い回しは、家臣の明智光秀に謀反を起こされた「本能寺の変(1582年)」で織田信長が言い放った言葉とされています。

「是非もなし」の使い方

「是非もなし」の使い方は、「追い詰められた状況において、どうしようもないや仕方がないと感じる場合」に使うという使い方になります。

例えば、「これだけの大雨が降っているのだから、大会の中止は是非もなし」などの文章で使うことができます。

「是非もなし」を使った例文

・『病気の具合が悪くなっているので、欠席するのは是非もなし』

・『是非もなしと言うしかないような、個人の努力では克服できない逆境が続いています』

・『告白して彼女から振られたのだから、今さら何を言っても是非もなし』

・『是非もなしと覚悟を決めたら、逆に気持ちが落ち着いてきました』

・『自分にできるだけの準備をしてから本番に臨んでいるので、ダメならダメで是非もなし』

「是非もなし」の類語

「是非もなし」の類語には、「否応なし(いやおうなし)・選択肢がない・打つ手がない・仕方がない・現実を受け入れるしかない」などがあります。

「否応なし」の言葉は、「自分の意志とは関係なしに何かを強いられること」を意味しています。

「是非もなし」は、「選択肢や打つ手がなくて現実を受け入れるしかないさま」を意味している表現です。

そのことから、「是非もなし」と類似した意味を持つ類語として、「否応なし・選択肢がない・打つ手がない」などが挙げられます。

「是非もなし」の古語の意味

「是非もなし」には「仕方がない・どうしようもない」の意味合いがありますが、それ以外にもいくつかの古語的な意味があります。

「是非もなし」には、観阿弥・世阿弥の「風姿花伝」「似合ひたるやうに出で立つべきこと、是非なし」にあるように、「そうすることが当然である・そうすべきである」の古語の意味があるのです。

また「是非もなし」の古語的な意味として、「ひたすらに・非常に・とても」もあります。

まとめ

「是非に及ばず」「是非もなし」の違いを説明しましたが、いかがだったでしょうか? 「是非に及ばず」「是非もなし」の意味・使い方・英語の違いや類語・対義語を詳しく調べたい時は、この記事をチェックしてみてください。